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オーストリアの遺跡へ行くぞ!

オーストリアといえばウィーン。「日の沈まない国」葉ぷスブル帝国の都だった場所です。中世から近世へ連綿と続いたハプスブルグ家だけに、「古代遺跡」というようなものはありませんが、立派な宮殿建築が豊富です。
街並みも美しく、ぜひ訪れたい国ですね。

 シェーンブルン宮殿 ★★★★ 
  完璧な宮殿です

遺跡と言う範疇に入らないかもしれませんが、98年5月にオーストリアに行ってきて、シェーンブルン宮殿がとても気に入りましたので、投稿させて頂きます。

ご存知の方も多いとは思いますが、この宮殿は、かのオーストリアの女傑、マリア・テレジア女帝の時代に現在の姿となったものです。彼女はオーストリアの偉大な女帝で、優れた治世を行い、有能な部下に支えられて外交手腕にも優れ、彼女の時代にオーストリア ハプスブルグ家は大いに栄えました。フランス王妃マリー・アントワネットは彼女の子供の一人です。

宮殿は、正門、前庭を控えた、マリア・テレジアン・イエローと呼ばれる明るく濃い黄色(少し黄土色、クリーム色がかっている)で彩られた主宮(屋根は濃い赤茶色、窓は黒、その対比も美しい)の後ろに、これまた完璧で広大な庭園が広がります。庭園はきちんと手入れがされており、地元の人たちの憩いの場、素晴らしい公園になっています。その中心、丘の上には、主宮と対峙して、典雅、優美なグロリエッテと言う建物(凱旋門)があります。

この旅行では同時にフランスのベルサイユ宮殿にも行きましたが、私の印象では、シェーンブルンの方が素晴らしいと思いました。ベルサイユは、規模、宮殿、庭共シェーンブルンに比べて大きく、往時はこちらの方が勝っていたかもしれないのですが、ベルサイユは何分革命にあって荒廃し、その後長期間放置されていましたので、調度等に乏しく、その点でも私には見劣りがしたように思えました。もっとも、ベルサイユは離宮に行っていないので、公平ではないかもしれないですが。それに、ベルサイユの庭の中心にある、地平線まで続く(ように見える)グラン・カナル(大運河)は見事と言うしかありません。

ヨーロッパの他の宮殿に比べ、ここは、内装、外観、装飾、調度品、庭園、どこを取っても完璧と言う感じの優雅さがあると私は思っていますが、私の一番のお気に入りは、広大で素晴らしい庭園の中心、丘の上にある、グロリエッテと呼ばれる建物です。

これは凱旋門として建てられたものですが、パリにあるような石灰色の、規模と威容を誇る事を目的としただけと思われるものとは異なり、”妖精”と称えられる優雅さを持っています。それは花壇のある平らな庭(庭の中心部)を挟んで主宮と対峙し、白い道が両側につづら折れに上がって行く緑の丘の上にあります。丘のふもとには、泉(ネプチューンの泉)があります。

建物は3つの部分からなり、横長で、各々の部分に真ん中の建物には3つ、両端の建物には4つづつの連続するアーチを持っています。基本的に門ですので、連続するアーチからは背景の森と青空が透けて見えます。真ん中の部分は両側の部分より少しだけ丈が高く、アーチにはガラスが嵌っています。比率として小さい壁の色は淡いクリームイエロー、周りや前についた階段、アーチの周囲、建物上部の柵状の部分は白。

建物の前方には池があり、その美しい姿を映します。建物上部、中心部にはお定まりの、鷲か鷹みたいな鳥や、想像上の怪物の彫像があります。全体に、華奢で典雅、ある種の完璧さが漂っています。白と淡い黄色の、透明な空気の妖精です。この妖精が、庭を見下ろし、微笑んでいます。

また、この宮殿は、内装も庭も素晴らしいです。ハプスブルグ家の栄華に支えられ、また幸運にも敗戦や略奪を経験せずに来たこともありますが、その調度は豪華華麗であり、かつ女帝やウィーンっ子の趣味の良さを反映して、他の宮殿にありがちな(と思われる)、ただひたすら華美に走って栄華を見せつけるためだけのものでなく、どの一隅を取っても趣味の良さが窺えるところばかりです。

漆絵の間、磁器の間、細密画の間、等々、テーマを持った部屋があったり、王家の人々を描いた絵は各所の壁を飾っていますし、各所はいわゆるロココ調の、きんきらきんの雲か何かを形取ったような装飾で飾られ、一言で言って、”ヨーロッパの宮殿の理想形”という感じです。

庭は、これまた素晴らしい。ヨーロッパの宮殿の庭は、植生を完全に刈り込んだり、ならべたりする事で幾何学模様を作り出すことが特徴で、この庭もその傾向はありますが、何かもっと緑が大切にされている気がします。主宮とグロリエッテの間は開けた庭になっており、その両翼に縦横に走る道で区切られた植え込みが広がります。その開けた部分と植え込みの境は、人の背の10倍はありそうな木を並べ、壁状に刈り込んだ”緑の壁”が延々と続いています。その壁の切れ目が道、所々にアーチ状の入り口(小道とか、小庭園に出る)があったりします。

各々の入り口は、往々にしてテーマを持った、様々な小庭園へと繋がります。放射状に伸びる道を象った植え込み(生け垣)のある小庭園、丸く、或いは真っ直ぐに、生け垣の間を続く小道。全体に、木々の丈は高く、緑は豊かで鮮やかです(この点でも、ベルサイユは不利かもしれない。緯度の違いのせいで、オーストリアの方が、大分気候がいいようですから)。

背の高い生け垣の両側を曲げて作られた、丈高い生け垣のアーチが延々と続く道。かと思えば、開けた公園風の場所に出たり。そこも、折りから5月と言う季節に恵まれて、芽吹き始めた美しい木や、しかるべく調和を持って植え付けられた花々(小潅木のものもあり、普通の草花もあったような気もします)があったりします。

ぶらぶらと歩き回るのに、これだけ楽しい、美しい場所は滅多に無いと思います。その完璧さに感動しすぎて、寛いで散歩する事が難しいかもしれないと言う難点はありますが。こういう公園を身近に持つウィーンっ子は、何て恵まれているんだろうと思います。

他にも、当時の趣味を反映して、ローマ風の廃虚を人為的に庭園の中に作り出した小庭園とか、この宮殿の名前の由来となった”美しい泉”(シェーンはドイツ語で美しい、ブルンは泉、です)とか、の庭園があります(この2者は工事中で、実際には見ませんでした)。また、これは宮殿とは直接関係ありませんが、ウィーンはいい街です。気候もよし、人の雰囲気も良し。居心地がいいんです。治安もいいし。街を行く人も、装いが洗練され落ち着いています。芸術の都、日本で言えば京都のような位置づけにある街だからでしょうか。

(’99年2月 記・ひおき)
 
★ヨーロッパの遺跡は、たとえばシルクロードのようなロマンはないけれど、それとは違った美しさ、歴史、洗練を感じます。とくに、ハプスブルグと聞くと、名もない一庶民の私などは「おお、すごいすごい参った」となってしまいますね(管理人)




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