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1 万景台(平壌)
  世界唯一? 政府公認の「ニセ遺跡」



1912年というから、朝鮮が日本に併合されて間もない頃の話である。金日成という人物がここで生まれたそうである。いまから80年も前の話で、しかも日本統治の過酷な時代なのだから、そのときの生家がいまに至るまで残されているなんてことは、ちょっと信じられない。でも、残されているんですねえ。「ウソだ〜」なんていう人は人民失格。誰がなんといおうが、ここは偉大なる主席の生家なのである。  

現存するのは、藁葺き屋根で土塀の建物が3つ。母屋と納屋と櫓である。「過去、朝鮮でみられた典型的な貧農」の作りだそうで、吹けば飛ぶような建物ということだ。  



そのわりのはぴっかぴっかで、作りもまあまあしっかりしている。どこから見ても80年前の建物とは思えない。十数年前に作られたレプリカ、というのがいいところじゃないか、なんて考えて、でもそんなことを大声でいうと帰国させてくれなくなりそうなので黙っていようと思ったけれど、やっぱり大笑いしてしまった。ははは。  

場所は平壌の西部12キロの高台。各地からやってきた朝鮮人民の訪問客で、大げさでなく1キロくらいの列ができていた。それが全員正装で、しかも誰も一言もしゃべらない。気持ち悪いくらいの静寂が、丘を包んでいたのでありました。  


他にもなんだか由来を聞いた気がするが、あまりにばかばかしくて覚えていません。北朝鮮をよく知らない人のために念のためにいっておくと、金日成がここで生まれたというのはウソですよ。ここは李朝時代から景勝の地として知られた場所で、「偉大なる主席様」誕生の地としてふさわしい、ということで革命後に生誕地と定められたところです。ですからここは、ニセの史跡です。ま、仮に本物だったとしても、何の価値もないと思いますが。 でも、偽物の遺跡を政府がでっち上げるのも、この国くらいだろうなあ。
(1996年訪問)




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